第七十三章

雨水が髪を伝い、襟元へと滑り落ちる。

綾瀬茉莉が道端でタクシーを待っていると、背後から急いた足音が近づいてきた。

「綾瀬茉莉!待ちなさいよ!」

いつの間にか、綾瀬空も追いかけてきていたのだ。

彼女の顔色は蒼白だったが、その瞳には狂気じみた怨毒が宿り、綾瀬茉莉を死に物狂いで睨みつけていた。

「あんたのせいよ! 全部あんたのせい! あんたがいたから、うちはこんなことになったのよ!」

「あんたなんて疫病神よ!」

綾瀬空は突進し、綾瀬茉莉の腕を乱暴に掴んだ。

「これで満足? パパとママを引っ掻き回して、家の中を滅茶苦茶にしたくせに! うちで偉そうに指図しないでよ。あんなはした金、誰が...

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