第七十五章

綾瀬の母は疲労の色を滲ませて目を閉じたが、やがて開かれたその瞳には、世の無常を見透かしたような蒼涼とした光が宿っていた。

「叔父さんは根はいい人よ。でも、一生臆病だった。あの母娘を止めることなんてできないのよ!」

母の呼吸が再び荒くなる。綾瀬茉莉は慌てて母の背をさすった。

「お母さん、落ち着いて。ゆっくりでいいから」

綾瀬の母は一つ息を整えると、刃物のように鋭い眼差しを向けた。

「この数年、あいつらは私の命を繋ぐ金を湯水のように使い込み、あんたを虐げてきた。それどころか、今度はあんたの命まで奪おうとしている!」

「今日あんたを車輪の下に突き飛ばせるなら、明日は平気で私の酸素チュー...

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