第七十七章

綾瀬茉莉は目元を熱くしながら、力強く頷いた。

母親は彼女をじっと見つめ、重い口を開いた。

「この数年、ずっと言えずにいたの。お父さんの死因……ただの自殺だと言い聞かせてきたけれど……」

綾瀬茉莉の心臓が早鐘を打つ。

薄々勘づいてはいた。だが、母の口から直接聞かされる重みは、まるで別物だった。

母親は綾瀬茉莉の手を強く握りしめた。

「お父さんは自殺なんかじゃない。間違いなく、誰かに殺されたのよ」

「お母さん、犯人は誰なの?」

綾瀬茉莉の声が震えた。

母親は首を横に振った。

「分からないわ。あの人は誠実で寛大な人だったから、敵なんていなかった。当時の周囲の人間は、みんな友人だ...

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