第七十九章

ツー・ツー・ツー。

通話が切れた電子音が、鼓膜の奥で反響していた。

綾瀬茉莉はスマートフォンを握りしめたまま、指先に微かな昂ぶりを感じていた。それは、柊家の醜聞を世に晒した直後の、独特な高揚感だった。

パソコンの画面上では、柊大空の失脚に関するトレンドワードが依然として上昇を続けている。コメント欄に渦巻く怒りと嘲笑は、まるで怒涛のように押し寄せ、柊家という揺らぐ根幹を容赦なく洗い流していく。

彼女は素早く気持ちを切り替え、画面から視線を外した。

綾瀬茉莉は手早くノートパソコンを閉じ、クローゼットへと歩み寄る。

彼女の持ち物は多くない。そのほとんどがシンプルで機能的なビジネススーツ...

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