第6章
きなこを入れた小さな段ボール箱を抱きしめ、重いスーツケースを引きずりながら、私はタクシーを拾った。
歩みを進めるたびに、脇腹の雑に縫合された傷口がズキズキと痛んだ。だが、心が引き裂かれるような絶望に比べれば、肉体の痛みなど気にも留まらなかった。
本来なら、午後十一時発のZ市行きの便に乗るはずだった。
「お客さん、羽田空港まで?」
ターミナル番号を伝えようと口を開きかけたが、膝の上の冷たい箱に視線が落ちた瞬間、喉の奥が詰まった。
きなこの動かなくなった体が、私の呼吸を苦しくさせていた。
「いいえ」湿った夜気を深く吸い込み、私は行き先を変えた。
「B町の青山霊園までお願い...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
