第15章 彼女は彼が気にするとでも思った?

 劉秘書に桜井雨音をマンションの下まで送らせると、彼女は車を降りて礼を言い、そのまま建物には入らず、角を曲がって隣の市場へと消えた。

 二十分後。

 両手いっぱいに袋を提げ、階段へ向かおうとしたところで、夕陽の中から篠原温人が歩いてくるのが見えた。

 空はもう薄暗いのに、彼の肩口には橘色の残光がかかっている。もともとすらりと長い影が、さらに伸びて地面に落ちた。

 前だけを見て、まるで足取りにまで集中力が宿っているみたいだ。

「偶然だね。また会った」

 雨音が先に声をかける。

 温人は顔を上げ、眼鏡の位置を指で押し上げた。

「……偶然だな」

「夕飯、もう食べました? 野菜買い...

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