第152章 塵にまみれるほど低く

 渡辺が振り返ると、彼女はぱっと笑顔を作った。

「じゃあ、康臣のことは渡辺さんにお願いね。私、眠いから先に部屋で寝るわ」

 そう言い残して、何事もなかったみたいに踵を返し、キッチンを出ていく。

 渡辺はきょとんとした。

「?」

 どういう風の吹き回しだ。

 いつもなら、二日酔い用のスープを持っていく役を奪い合うようにしていたのに。

 急に、性格でも変わったのか。

 渡辺は鍋のスープを半分ほど器に注ぎ、トレーに載せて主寝室へ運んだ。

 神崎康臣は今日、酒量こそ多くない。だが夕飯を抜いていて、胃の奥がじくじく痛み始めていた。

 そこへ熱いスープが運ばれてきたので、拒む理由もな...

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