第16章 彼は片手で彼女の手首を囲める

篠原美羽は刺身が好きで、新鮮なサーモンに、定番の海老なども合わせて注文した。

桜井雨音は冷たいものが得意じゃない。ラーメンを一杯、それから寿司を少し。

ラーメンの味は可もなく不可もなく。けれど、具材が新鮮なのが救いだった。

美羽は、雨音がきっちり行儀よく食べているのを見て、わざとからかうように言う。

「このサーモン、身がとろっとしてて最高だよ? ほんとに一口もいらないの? 食べたら世界変わるかも」

雨音は丁重に辞退する。

「遠慮しとく。知ってるでしょ、私、生ものって気持ちの時点で無理なんだって。ラーメン食べる」

「ほんと、昔から全然変わらないね」

知り合った頃からそうだ。美羽...

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