第160章 かつて浪費したものは、今や得られない

監視モニターの時刻表示は18時00分。だだっ広いリビングで、桜井雨音がひとり、ソファに腰を下ろしていた。

 神崎康臣は一目で察した。――彼女は、帰りを待っている。

 テレビもつけず、スマホも触らず、ただ座っているだけ。まるで、ゆっくり枯れていく薔薇のように。

 そうか。自分が好きだった「家の感じ」――いつ帰ってもリビングに灯りが一つ残っている、あの温度は。ひとりの女が、来る日も来る日もこちらに合わせ、嫌がることもなく待ち続け、挙げ句の果てには自分を丸ごと差し出す。そんな犠牲の上に成り立っていたのだ。

『子どもの頃、親父は仕事で、母さんは付き合いで忙しくてさ。俺は家に置き去りで、家政婦...

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