第162章 気にしなくていい

 病室で、瀬戸美月が目を覚ました瞬間――腹の奥が、すうっと冷えた。

 子どもが、いない。

 手を伸ばしても、何も触れない。布団の膨らみもない。泣き声もない。

 息が詰まり、胸がひしゃげる。喉からひどい音が漏れた。

 この子は――彼女にとって、最後の切り札であり、唯一の希望だった。

 それが、消えた?

 そんなこと、あっていいはずがない。

「先生……ねえ、私の赤ちゃん、まだいるんでしょ? さっき言ったの、嘘だよね? 冗談にもならないよ。私の子は生きてる、絶対!」

「……瀬戸さん。お辛いのは分かります。でも、お子さんは……確かに亡くなっています。気持ちの整理は簡単じゃありませんが...

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