第34章 軟膏

 神崎康臣も、黙って殴られるようなタマじゃない。拳を握りしめるや、篠原温人へ殴り返そうと踏み込んだ。

「俺を殴る? お前、何様だよ」殴りかかりながら、唾を吐くように罵る。「俺があいつとイチャついてた頃、お前なんかどこで何してたんだか――」

 篠原温人は振り下ろされる拳を受け止め、その手首を掴んだ。神崎康臣の逆上と比べれば、彼のほうが冷静で理性的に見える。――ただし、その目に凝り固まった冷たさを見ないなら、だ。

「じゃあ、あなたは何の立場なんですか。別れたのに執拗に絡む元カレ? それとも、強姦犯?」

 言葉の一つ一つが刃になって、神崎康臣の急所へ突き刺さる。

「殺すぞ――!」

 神...

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