第40章 たとえ頼まれても、もう二度と来ない

神崎康臣は固まった。

「お前……」

 桜井雨音は、あの別荘での出来事が脳裏に蘇った瞬間、視線に露骨な怯えと警戒を滲ませた。

「動かないで! 近づかないで!」

「雨音……」

 胸の奥がずきりと痛む。神崎康臣は唇を噛み、かすれた声を落とした。

「……あの日、俺は――」

「言わないで。帰って。私たち、もう話すことなんてない」

「雨音……」

 男の目は赤く充血し、原地に縫いつけられたみたいに立ち尽くす。

「ごめん。俺が悪かった。もう……もう揉めるの、やめよう? 俺が……俺が言っちゃいけないこと言って、やっちゃいけないことして……」

 言葉が途切れ、喉の奥が詰まったように震える。...

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