第43章 来られないのは未練があるから?

桜井雨音は紙袋を手に取り、二人で蒼海大学へ向かった。

構内をぶらぶら歩きながら他愛ない話をしていると、雨音は改めて思う。柊時宗は本当に博識で、どんな話題を振ってもすっと受け止めて返してくる。

口調は落ち着いていて、振る舞いも柔らかい。近くにいて不思議と疲れない――そんな居心地のよさがあった。

ひと通り見て回り、石壁の脇を通りかかったとき、雨音はふと横を向いて、見覚えのある背中を見つけた。

篠原温人が講義を終えたところらしく、実験室へ向かう途中だったのだろう。何気なく顔を上げた瞬間、笑みを含んだ雨音の瞳と目が合う。

一瞬、温人が固まる。続けて、彼女の隣に立つ柊時宗の存在を認め、視線が...

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