第51章 彼女は人であって、物ではない

「いるんだろ。開けてくれないか。話そう」

「桜井雨音! 聞こえてるだろ!」

 ……

「……いい度胸じゃねえか、桜井雨音。いい度胸だ。開けないつもりか? 開けなきゃ俺が入れないとでも思ってんのか?」

 懇願から冷静へ。そこからじわじわと怒りへ。

 神崎康臣の忍耐は、刻一刻と削れていった。

 ついに諦めて背を向けた、その瞬間だった。

 不意に、冷えきった鋭い視線とぶつかる。

 神崎康臣は足を止め、眉間に深い皺を刻んだ。

 狭い階段室。薄暗い蛍光灯の下、篠原温人が一段上に立っていた。ちょうどこの階まで上がってきたところらしい。

 この時間に、ここへ来る理由など、考えるまでもない...

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