第68章 同じ道の人ではない、別れてもいい

夕暮れ。

 台所からふわりと香りが流れてきて、桜井晋太郎が湯気の立つ椀を運んできた。

「三鮮スープ。新しく覚えたんだ。味見してみてくれないか?」

 桜井雨音は、食卓いっぱいに並ぶ料理を見回す。どれも、彼女の好きなものばかりだった。

 桜井敏恵は、魚の腹身のいちばん柔らかいところを箸でつまみ、雨音の茶碗にそっと置く。

「お父さん、魚はあんまり得意じゃないけど、この魚はさっき味見したら、雨音の好きな味だったわ。ほら、たくさん食べなさい」

 晋太郎がむっとする。

「なんだよ、俺が魚はダメって。俺は魚じゃない、人間だ!」

「ぷっ――」

「はいはいはい」敏恵は呆れたようにうなずいた。...

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