第69章 母の苦境

「なんで私の文章が『支離滅裂』だなんて言えるのよ! その言葉が作家にとってどれだけの侮辱か、分かってるの?!」

「……ええ、あなたが編集者で、プロの目と市場判断があるのは分かってる。だけど、ああいう作風は私の土俵じゃないの。転向するにしても、さすがに飛びすぎよ!」

「……お互い、少し冷静になったほうがいいわね。じゃあ、私も用があるから」

 桜井敏恵は通話を切り、振り向いて娘の訝しげな視線とぶつかった。彼女は口元に笑みを作る。

「大丈夫よ。出版社の編集さんから」

「……ほんとに大丈夫?」

「嘘つくわけないでしょ」

 敏恵は可笑しそうに娘を抱き寄せた。

「ここ数年、紙の出版は景気...

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