第71章 除夜の夜に彼女を想う

それに、彼女と母親の会話から桜井雨音が聞き取ったのは、編集者が作家を気遣う言葉なんかじゃなかった。あるのは、圧と、じわじわ心を折るような誘導――いわゆるPUAめいたものだけ。

「お願い、お願い~! いいでしょ~?」

「いいよ。帰ったら送ってやる。けど、最後まで読む根気、あんたにあるの?」

桜井雨音は胸を張る。

「絶対ある!」

……

家に着くと、桜井晋太郎が玄関先で春聯を貼っていた。自分では全体のバランスが見えないらしく、雨音が首をかしげて確認する。

「パパ、ちょっと曲がってない?」

「左に寄せて」

車から降りてきた桜井敏恵が、じとっと眺めてから舌打ちまじりに言う。

「なん...

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