第74章 モップでぶん殴ってやる

「まあっ! ほんとに雨音ちゃんじゃない! さっき門のところで見かけたとき、見間違いかと思ったわよ!」

 松本春子――お隣さんで、近所でも有名な噂好き、声もでかい。

 夫も第二高校の教師で、桜井雨音の家と同じ年に教職員住宅へ越してきたらしい。

 雨音の姿を見つけるや、春子は小走りで近寄り、上から下までじろじろと値踏みするように眺め回した。

「いやぁ、すごいすごい! やっぱり都会は人を磨くわねえ。雨音ちゃん、立派になっちゃって!」

 桜井雨音「……」

「見てよ、この格好。スタイルもいいし、服も靴も今どきでさぁ!」

 褒め言葉をまくしたてたかと思うと、今度は急に声を潜め、眉をひょいひ...

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