第89章 学術的攻撃性に満ちている

 桜井雨音は、桜井敏恵の誕生日に間に合わなかったらどうしようと一時は気を揉んでいた。けれど幸い、誕生日の前日、注文していた本はきっちり届いた。

 桜井敏恵は待ってましたと言わんばかりにそれを抱え、目を輝かせる。

「これ……! どうして私がずっと原書のこのセット探してたって知ってるの?」

「何回口にしてたと思ってるの」桜井雨音は眉を上げる。「知らないほうが難しいって」

「ふん。……こんなに長いこと家に帰ってこないからよ。でも、ありがとうね。私の宝物。すっごく嬉しい」

 桜井敏恵は口元をゆるめ、娘をぎゅっと抱きしめた。水みたいにやさしい目で見つめながら、髪をさらり、さらりと撫でる。

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