第92章 篠原温人:怖がらないで、きっと良くなる

 彼女の怒りに燃えていた瞳が、ぱっと光を宿した。

 ――いいじゃない。

 ――そういうことね。

 どうりで面接で一位を取れるわけだ。

 神崎綺羅は即座にスマホを取り出し、二人の背中に向けて連写した。

 撮り終えて画面を覗く。篠原温人は桜井雨音の半歩うしろ。長身の影が、華奢な彼女をすっぽり覆っている。

 この角度だと、まるで男が意図的に半分抱き寄せているみたいに見えた。

 ――わざわざ来た甲斐があった。

 神崎綺羅は目を細める。非情だなんて言わないで。悪いのは桜井雨音のほうだ。身の程を知らずに、わざわざ自分と奪い合おうとしたのだから。

 車に戻るなり、彼女は待ちきれないとばか...

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