第113章 追っている最中

彼女は口を開きかけた。『私は彼の彼女じゃない』と言おうとしたのに、言葉が出る前に、助手席の男が先に口を開いた。

「……彼女は同意してない」

瀬戸北斗の声は落ち着いていて、どこか笑みを含んでいる。視線が警備員のへつらった笑顔をなぞり、最後に立花柊の真っ赤な耳たぶへ落ちた。

「俺が追ってる最中だ」

警備員は一瞬きょとんとし、目を細めて立花柊をじっと見た。瀬戸社長のアプローチを断るなんて、どれほどの美人なのか――確かめたくなったのだろう。

立花柊はハンドルを握る指に力を込める。ぎし、と革が鳴った。今すぐ地面に穴があれば潜りたい。できるなら、瀬戸北斗を助手席から蹴り落としてやりたい。

歯...

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