第116章 試合に参加する

運転手はこの日だって、どんな客にだって当たってきた。だからこそ、嫌味をぶつけられて腹の底に火がついても、表には出さないでいた。

「初乗りが四百。残りは全部、そっちに送ったから」

それでも曾我梅は食い下がる。

「たった百メートルって自分で言ったくせに、金取るの? 恥ずかしくないの?」

さすがに運転手も堪えきれず、声を荒げた。

「なんだその言い方! 乗っただろうが。乗ったなら初乗りはもらうに決まってんだろ!」

運転手は体格のいい男だった。怒気を含んだその迫力に、曾我梅は殴られるのが怖くなったのか、一瞬でしおらしくなる。

舌打ちしながら車を降りると、ちょうど夫の佐野健邦が迎えに来てい...

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