第14章

立花柊は逃げなかった。迷いなく石を拾い上げて叫ぶ。

「少し、下がって!」

その美しい横顔には、息を呑むほどの決断が宿っていた。瀬戸北斗は呆気に取られ、言われるがまま背を引く。

――ガンッ!

石の尖ったほうで叩きつけると、車窓のガラスが砕け散った。

瀬戸北斗を、爆死させるわけにはいかない。

まだ……十分ある。

賭けてみる価値はある。

この世に身寄りなんてもうない。せめて、お腹の子が生まれてくる前に――実の父親と二度と会えない、そんな未来だけは絶対に嫌だった。

それに……本当は、瀬戸北斗のことを、もう手放せない。

立花柊は胸の奥の恐怖を無理やり押し込め、車内を素早く見渡した。...

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