第29章

「――違う」

その文字が口をついて出た瞬間、これまでいくつもの修羅場をくぐり抜け、常に泰然としてきた瀬戸北斗でさえ、言葉を失った。あまりの衝撃に、表情がひび割れそうになる。

つまり、立花柊には新谷寒弥以外にも男がいる――そういう意味なのか?

頬を平手で打たれたような屈辱が込み上げ、瀬戸北斗は思わず皮肉を投げた。

「立花柊。まさか、お前がそんなに「自由」なタイプだとはな。結婚前に腹を大きくして、相手も複数とは」

薄い笑みを浮かべたまま、さらに追い打ちをかける。

「まさか……子どもの父親が誰かも分からない、なんてことはないよな?」

その言葉を聞いた途端、立花柊は一瞬、呆気に取られた...

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