第53章 家柄が釣り合っている

窓の外の雨音が、じわじわと密度を増していく。

二人はそれぞれビーズクッションに身体を沈め、どちらも口を開かなかった。

狭い賃貸の一室に、沈黙がゆっくりと広がる。

そこには、言葉にしがたい緊張だけが絡みついていた。

やがて、瀬戸北斗が立ち上がり、袖口を軽く整える。

「髪、ちゃんと乾かせ。風邪ひくぞ」

淡々とした口調。

まるで些細な事務連絡でもするみたいに。

そう言い置くと、彼は玄関へ向かった。立花柊の脇を通り過ぎても足を止めない。

さっきの「俺の女になれ」も、ただの思いつきだったかのように。

翌日。

立花柊はギリギリで出社し、パソコンを立ち上げるなり仕事に取りかかった。

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