第69章 家族がいない

自分の心臓が「どくん、どくん」と激しく打つ音まで、はっきり聞こえる気がした。

立花柊は反射的に身を起こそうとして、慌ててソファの上へ手をつく。だが、触れてはいけない場所に触れてしまった。

瀬戸北斗の太腿は硬かった。スーツの生地越しでも、その下にある筋肉の輪郭がはっきり分かる。

立花柊の頭の中は、ぼんっと真っ白になった。

「ご、ごめんなさいっ」

火傷でもしたみたいに手を引っ込め、そのまま勢いよく後ろへ反る。後頭部が危うくテーブルの脚にぶつかりかけた、その瞬間――

瀬戸北斗の瞳がわずかに見開かれる。彼はとっさに手を伸ばし、立花柊の後頭部をひと息に支えた。固い木と彼女の頭の間へ掌を差し...

ログインして続きを読む