第78章 忍びない

「たとえ本気で好きな女がいるとしても、立花家には黙って外で囲っておけばいいでしょう。婚約破棄なんて、そこまでする必要あるの?」

瀬戸北斗の声は淡く落ち、わずかな冷たさが滲んだ。

「こっちは仕事が残ってる……」

言い終える前に、通話は切られていた。

スマホを置き、椅子の背にもたれる。口元がわずかに引きつる。笑みと呼ぶには程遠い、皮肉だけが残った表情だった。

瀬戸宏知が仕組んだ事故と爆発で、病院のベッドに横たわり生死の境をさまよっていたとき――母は一度だって見舞いに来なかった。

それが今は、口約束に過ぎない婚約を解消しただけで、ここまで取り乱す。

これで終わりだと思っていたのに、三...

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