第80章 女主人のネックレス

瀬戸北斗は手を離さなかった。むしろ、いっそう強く握り込む。指の腹が、不意に立花柊の手首をかすめた。

「立花柊。こっち見て話せ」

声を荒らげたわけじゃない。けれど、拒めない圧がある。

立花柊はその場で固まった。夜風が吹き抜け、結ばれていない髪がさらりと乱れる。

「ほんとに平気……」

くぐもった声で言い、視線を落とした。

「帰って。今日は……ご飯、ごちそうさま」

瀬戸北斗は二秒ほど黙ってから、彼女の前へ回り込む。少し腰を折り、真正面から目を覗き込んだ。

街灯の光が頬をなぞり、鋭い輪郭がふっと柔らぐ。

「店を貸し切ったこと、気にしてるのか」

立花柊の瞳孔がわずかに縮む。すぐに顔...

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