第81章 残業

保坂琴美は、くしゃくしゃに揉まれた写真をテーブルへ放り投げると、目の前のアイスコーヒーを一気にあおった。ようやく胸の奥で燃えていた苛立ちが、ほんの少しだけ鎮まる。

「……これだけ?」

眉間に深い皺を刻み、男を値踏みするように見据える。

「他は?」

「現時点では、これが限界でして」

男は手をこすり合わせ、へらへらと愛想笑いを浮かべた。

「立花柊、二十四歳。孤児で施設育ち。その後、保坂家に引き取られましたが、ほどなく養父母が交通事故で亡くなっています」

「それから、養父母の遺した子――保坂心月を一人で育て上げました。現在は立花グループの戦略開発部に在籍。瀬戸社長とはユニバ・グループ...

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