第87章 現行犯だった

立花柊の手が震えていた。恐怖からじゃない。純粋な怒りで、指先が言うことをきかない。

保坂琴美の、作り込まれた化粧と、見下ろすような目。

それを見た瞬間、ここ最近じわじわと瀬戸北斗に好感を抱きかけていた自分が――心底、気持ち悪くなった。

私が瀬戸北斗を誘惑した?

あの夜、被害者はこっちだ。

あんなこと、望んだはずがない。

それでも瀬戸北斗は何度も距離を詰めてきて、彼女は避けて、逃げて、ついには仕事まで辞めた。

――これ以上、何をしろっていうの。

「私は瀬戸北斗を誘惑なんてしてません」

立花柊の声は小さい。けれど、言葉は一つひとつ、鋭く届いた。

「あなた、自分の息子がどんな性...

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