第89章 誕生日

どれくらい時間が経ったのか分からない。立花柊は、ようやく少しずつ落ち着きを取り戻した。

もともと大げさに泣きわめくタイプじゃない。幼いころから泥だらけになって生きてきて、彼女は知っている。涙なんて、いちばん役に立たない。

ふっと我に返って、柊は目を見開いた。

いつもはごく普通の自宅のリビングが、いつの間にか金色の風船とガーランドで埋め尽くされている。テーブルの上には、誕生日ケーキまで。

柊がすべてに気づいたのを見て、新谷寒弥は口元をわずかに緩めた。

「本当は、君が児童養護施設から帰ってきてから驚かせたかったんだけど」

「誕生日おめでとう、柊」

押し込めたはずの涙が、また喉の奥か...

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