第99章 俺を追い詰めるな

「立花柊、こっちを見ろ」

瀬戸北斗の声は低く、かすかに掠れていた。何かを必死に押さえつけているみたいに。

「瀬戸北斗……あんた、頭おかしいの?」

立花柊は壁に背を押しつけ、少しでも男との距離を取ろうとする。けれど、あの馴染みのある木質の冷たい香りが、城を落とすみたいに容赦なく彼女の領域を侵してきた。

顔を背ける。首筋がぴんと張り、拒絶はあからさまだった。

瀬戸北斗が手を伸ばし、彼女の小さく整った顎をつまみ上げる。無理やり視線を合わせさせて――

「言い終わったか」

立花柊は答えない。目の縁が赤く、睫毛が震える。水面をかすめる蝶の羽みたいに。

「言い終わったなら、次は俺だ」

声...

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