第5章

昨日の夜、亮が私の部屋に詰問しに来たとき、私にできたのは唯一つ――寝たふりをすることだけだった。

「玲奈、起きてるんだろ」ドア越しに兄が言った。

「疲れてるの」私は心の底から眠そうな声を装って、口ごもるように返した。「話は明日にしない? 約束するから、ちゃんと全部説明する」

長い沈黙の後、ため息が聞こえた。「わかった。でも、明日は絶対に話すからな」

「明日ね」私はそう同意して、兄の足音が廊下を遠ざかっていくのを聞いていた。

そして今朝。私はまたしても廊下から聞こえる話し声で目を覚ました。

「このまま避け続けるわけにはいかないよ」誰かが言っている。たぶん、直樹だ。

「誰も何...

ログインして続きを読む