第7章

伊佐子視点

体が宙に浮いているのを感じた。

水の中ではない。奇妙な無重力状態だった。見下ろすと、ベッドには自分自身の体が静かに横たわっていた。紙のように青白く、唇はわずかに紫色を帯びている。

これが、死というものなのか。

想像していたような恐怖はなかった。代わりに、かつてないほどの静けさを感じていた。ようやく、あの苦痛に耐えなくてもよくなったのだ。

ドアの鍵が開く音がした。入ってきたのは海斗だった。婚約パーティーで着ていた紺色のスーツをまだ身につけていて、髪は乱れ、少し酔っているように見えた。

「伊佐子」。彼は私の名を呼んだ。その声には、どこか勝ち誇ったような響きがあっ...

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