第1章 ドクター武内を探す

「佐藤社長、探していたドクター武内の資料が見つかりました」

朝の光が差し込むオフィスに足を踏み入れた佐藤深。彼の後を追うように、アシスタントの山本宵がタブレットを手に急ぎ足で駆け込んできた。

「見つかったのか?」

佐藤深は驚きのあまり足を止め、すぐに振り返って山本宵を見つめた。その目には驚愕と信じられないという感情が浮かんでいた。

山本宵は急いでタブレットを佐藤深の前に差し出した。画面には新安病院の採用公告が表示されていた。

「ドクター武内が新安病院に入職しました。今日が初出勤日です」

山本宵は慌てて補足した。

「彼女が新安市にいるなんて、こんなに時間がかかるとは」

佐藤深は眉をひそめ、少し不機嫌そうな表情を浮かべた。

山本宵はその様子を見て、急いで言った。

「佐藤社長、先に彼女と話をしてみましょうか?鈴木悦子さんのことも…」

しかし、山本宵が言い終わる前に、佐藤深はすでに大股でオフィスを出て行き、断固とした口調で言い放った。

「今すぐ新安病院に行くぞ。ぐずぐずするな!」

山本宵は一瞬も遅れず、佐藤深の後を追って小走りでオフィスビルを出た。

新安病院の入口では、鋭いサイレンの音が朝の静けさを破った。救急車が急行し、緊急通路の前に停まった。待機していた医療スタッフが急いで車のドアを開け、中の担架を慎重に引き出した。しかし、担架の上の患者を見た瞬間、全員が呆然と立ち尽くした。

担架の上の患者は目を閉じ、額には明らかな凹みがあり、その周囲は青紫色に腫れ上がっていた。元々平らだった頭は今や凹凸があり、乾いた血が髪の毛を固めていた。耳からも血が流れ出し、担架の端に小さな血の溜まりを作っていた。首は簡易的な固定具で固定されていたが、不自然な角度で曲がっているのが見て取れた。意識はなく、かすかな呼吸だけが彼の生存を証明していた。

救急隊員は担架を救急室に押しながら説明した。

「患者はバイクを運転中に酔っ払いのトラックにぶつけられました。今生きているのが奇跡です。早急に手術が必要です、さもないと…」

急診医は困惑した表情を浮かべた。

「確かに手術が必要ですが、こんなに難しい手術は…」

彼は言葉を続けることができず、ただ眉をひそめ、心配そうな目をしていた。

病院の廊下を進む中、壁の案内板やポスターが目の前を過ぎ去り、周囲の人々が心配そうに見守っていた。

ついに、救急室のドアが目の前に現れ、医師たちは深呼吸をして、ためらうことなく患者を押し込んだ。

一人の老婦人が若者たちに支えられながら「ドサッ」と救急室の前にひざまずき、泣きながら訴えた。

「先生、どうか夫を助けてください。彼がいなければ、私も生きていけません」

ますます多くの人々が救急室の前に集まり、ざわめきが広がった。

その時、美しい若い女性が人混みをかき分けて救急室に入り、患者の瞳孔を確認した後、隣の医師に向かって言った。

「患者は非常に危険な状態です。すぐに手術が必要です」

急診医も患者が手術を必要としていることは分かっていた。しかし、病院の医療設備は限られており、自分の技術も限られているため、こんなに難しい手術を成功させる自信はなかった。

「何をためらっているんですか?」

若い女性は声を上げた。

「早く手術の準備を!」

そう言って、彼女はバッグから新品の白衣を取り出して身に着けた。

周囲の医師たちは彼女を好奇心いっぱいに見つめた。

「あなたは一体何者ですか?」

救急科の医長は不機嫌そうに尋ねた。

その時、若い女性はまだ自己紹介をしていないことに気づいた。しかし、目の前の患者の状態が緊急であるため、自己紹介する時間もなく、大声で言った。

「私は新しく着任した脳外科副医長のドクター武内です。今すぐ手術の準備をしてください」

救急科の医長は、今日優れた脳外科医が入職することを知っていた。しかし、目の前の女性があまりにも若く、美しすぎて、彼が想像していた手術の専門家のイメージとはかけ離れていたため、彼女の身元に疑念を抱いていた。

患者の家族も泣き止み、疑わしげに言った。

「ドクター武内、あなたは若すぎます。ここで混乱を招かないでください。先生、どうか彼を助けてください」

救急科の医長は唇を噛みしめ、内心の葛藤の末、隣の医師に向かって急いで言った。

「早く上級病院に送る準備をしろ。時間がない」

そう言って、彼は先に担架を押して患者を連れて行こうとした。

ドクター武内は前に立ちふさがり、大声で非難した。

「患者は転院の揺れに耐えられません。あなたたちは命を粗末にしている、殺人と同じです!」

救急科の医長は鼻で笑い、軽蔑の表情を浮かべて言った。

「手術をすると言って、問題が起きたら誰が責任を取るんですか?」

「私が責任を取ります!」

その時、救急室の外から響くような声が聞こえた。全員がその声に振り向き、ドクター武内もその方向を見た。

新安病院の院長が大股で入ってきた。彼の表情は冷厳で、威圧感があり、自然と敬意を抱かせるものだった。

救急科の医長は唇を震わせ、何か言い返そうとしたが、院長の威厳ある目を見て言葉を飲み込んだ。

院長はドクター武内に向かって微笑み、信頼の眼差しを向けた。

「ドクター武内、ようこそ。手術の準備をしてください。何か問題があれば、私が責任を取ります」

院長の言葉に、医療スタッフたちは顔を見合わせ、心の中に疑念を抱きながらも、口を閉ざした。数人の若い家族が急いで担架を押し、患者を手術室に運んだ。

ドクター武内はその後を追い、手術準備室に入った。

しかし、誰も知らない隅で、佐藤深は一部始終を見守っていた。彼の口元には微かな笑みが浮かんでいた。

山本宵は心配そうに小声でつぶやいた。

「このドクター武内、若すぎるように見えますが、彼女の技術は…」

佐藤深の目は冷たくなり、冷ややかに言い放った。

「院長が責任を取ると言っているのだから、彼女の技術に問題はないはずだ。ドクター武内、ついに見つけたぞ」

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