第332章 彼の優しさには、抗えない

紗雪はぽんと自分の頭を叩いた。「すっかり忘れてた」

連続で働き詰めで、資料を読んでいただけでも頭がクラクラしていた。朔也が午後に研究所へ巨額の投資をしたことなど、とうに頭から抜け落ちていたのだ。

そのとき、朔也が物音に気づいたのか、休憩室から出てきた。

紗雪の姿を認めると、彼女の方へ歩み寄り尋ねる。

「終わったのか?」

「うん」紗雪は頷いた。

朔也は彼女の肩に上着を一枚かけると言った。「じゃあ、帰ろう。ここはもうすぐ冬だ。夜は冷える」

紗雪は今回、急遽出国したため、手荷物は着替え二着のみで、厚手の防寒着は持ってきていなかった。

紗雪は自分にかけられた上着を見て、思わず尋ねた。...

ログインして続きを読む