第350章 朔也を思い出した

 紗雪の視線は無意識のうちに彼へと向けられ、その瞳の奥には極めて複雑な感情が渦巻いていた。

 もう断ったはずなのに、どうして彼はこうまでして……?

 結婚して、そして離婚する。この政略結婚で利益を得るのは榊原家だけで、彼にも鳴海家にも、何の得もないのに。

 景も、本当はこんなことをしたかったわけではない。

 紗雪を相手にするには、十分な忍耐が必要だと分かっていた。

 こちらが焦りを見せれば見せるほど、彼女を怯えさせてしまう。

 先ほどから、彼は彼女の感情の変化にずっと注意を払っていた。

 彼の両親が政略結婚を切り出したこと、そして先ほどの母親の説得の言葉は、すでに彼女を少し怯え...

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