第197章

藤堂光瑠は息を呑み、慌てて振り返った。

圭人が驚いた顔でこちらを見ている。彼女は薄井宴を突き飛ばし、よろめきながら圭人のそばへ駆け寄った。

全身が震え、呼吸が荒くなる。「……圭人」

圭人は驚きと喜びに満ちていた。

「ママ? 本当にママなの? ママ、行かなかったの? これ、夢じゃないよね?」

藤堂光瑠の目から、堰を切ったように涙が溢れ出た。彼女はその小さな体を、ぎゅっと胸に抱きしめる。

「本当にママよ! ママは行ってない! 圭人は夢を見てるんじゃない! ママはもう行かない! もう行かないから!」

圭人の呼吸が速くなる。「ママ……」

「うん、うん、ママはここにいるわ!」...

ログインして続きを読む