第349章

薄井宴は安堵する一方で、その謎の人物に歯ぎしりするほど憎しみを覚えた。

 二十分ほどして、彼はひかりが丘団地へと戻った。

 そっとドアを開けて部屋に入ると、リビングに藤堂光瑠の姿はなく、主寝室へと向かった。

 もう昼だというのに、主寝室の中は依然として薄暗い。

 カーテンはまだ引かれておらず、隙間から差し込むわずかな光が藤堂光瑠の顔を照らし、彼女がまだ熟睡しているのが見て取れた。

 彼女の姿を見た途端、薄井宴は謎の人物のことなどすっかり忘れてしまった。

 今日は、彼と藤堂光瑠だけの時間。二人の世界だ。誰にも邪魔はさせない。

 薄井宴は忍び足でドアを閉め、ベッドのそばへ歩み寄ると...

ログインして続きを読む