第366章

「パパ!」薄井宴が完全に我を失いかけているのを見て、圭人が慌てて声をかけた。

 夏川甘も薄井宴の今の表情にぎょっとし、恐る恐る注意を促す。

「落ち着いて、みんな落ち着いて。太郎はまだ休んでいるのよ」

 薄井宴の怒りは一度火がつくと収まらない。巌谷研一の襟首を掴んで外に引きずり出し、二人きりで話をつけてやろうと思った。だが、その行動を起こす前に、藤堂光瑠の一瞥に射竦められた。

 藤堂光瑠は何も言わず、ただまっすぐに彼を見つめている。

 抑えようにも抑えきれない薄井宴の衝動は、彼女のその視線によって、不思議と少しずつ萎んでいった。

 藤堂光瑠は彼を数秒間見つめた後、巌谷研一に視線を移...

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