第383章

だが、薄井宴が応答する前に、藤堂次郎が突然やって来た。

 大きな瞳をぱちくりさせながら、彼はどこか遠慮がちに薄井宴を見上げる。

「ちょっと話があるんだけど」

 薄井宴はすっと目を細めた……。

 彼は考えるまでもなく、御景園からの電話を即座に切り、出なかった。

 今の彼の頭の中は、藤堂光瑠と子供たち、そして巌谷研一と謎の人物、娘、それに藤堂光瑠のあの夫のことでいっぱいだった……。

 自分が既婚者であり、まだ見ぬ妻がいることなど、すっかり頭から抜け落ちていた。

 これまで一度も心に留めたことがなく、会ったこともないのだから、彼にとってはその存在は空気のようなもの。普段は思い出すこと...

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