第438章

巌谷研一は息をのんだ。瞳に浮かんだ狼狽は、隠しようもない。

目の前の人間を乱暴に突き飛ばすと、よろめきながら家の方角へ駆け出した。

――宝と、自分だけの家へ。

ほどなくして周防影にも報せが入る。彼はすぐさま薄井宴へ連絡を入れた。

「霊渓村に到着しました。ただ、たったいま情報が……宝がいなくなったそうです。巌谷研一が村に入った、と」

薄井宴の表情が鋭く引き締まる。

「……いなくなっただと?」

「はい」

「踏み込め。探せ」

巌谷研一が慌てるなら、薄井宴だって慌てる。

静まり返っていた小さな村が、瞬く間に騒然となった。

巌谷研一の側も薄井宴の側も、もう殴り合っている場合じゃな...

ログインして続きを読む