第452章

巌谷研一が逡巡していると、薄井宴が険しい顔のまま言い放った。

「その三つは一つも削れない。飲めないなら、交渉は終わりだ。俺が無理やり宝を引き留めたら、宝は俺を恨むかもしれない。だが、お前が無理やり宝を母親から引き離したら、宝はお前を恨まないとでも思うのか? 宝はお前のことが好きだ。でも、母親のことだって好きなんだ」

宝を悲しませない唯一の道は、双方が歩み寄ること。

折り合えないなら、敵対している事実を宝に知られるだけだ。そうなれば、宝は傷つく。

巌谷研一は眉をひそめ、しばし沈黙したあと、吐き捨てるように言った。

「……いい。飲む」

そう言うなり立ち上がり、庭へ向かって足早に歩き出...

ログインして続きを読む