第29章:モンスター

カエランは足を止め、あからさまに不本意そうな様子でダレルへと視線を移した。その表情は、地獄の業火さえも凍りつかせそうなほど冷徹だ。

カエランの挨拶は、まさに氷点下の冷たさだった。「アルファ・ダレル」

彼はカミラの方を見ようともしなかった。

ロビーは完全に静まり返っていた。

(事態が爆発する前に、彼をここから連れ出さなくちゃ)

私は何とか早急にその場を収めようと、一歩前へ出た。「カエラン、もう行ける?」

三人の視線が一斉に私へと注がれる。

ダレルは唖然として口を半開きにした。「カエラン……だと?」

カミラの表情が、困惑から驚愕へ、そして恐怖とも取れるものへと移り変わっていく。

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