第30章:愛してる

ケーラン視点

ダレルの唇がセーブルの耳元で動く。クソ忌々しいほど近い。

ストームが意識の中で咆哮し、血を求めた。「喉笛を食いちぎれ! 俺たちのものに触っているぞ!」

俺は拳を固く握りしめた。皮膚の下で圧が高まり、指の関節がバキバキと音を立てる。

『一体あいつは、何を吹き込んでやがる?』

ダレルがどんな毒を注ぎ込んだのか、セーブルの顔から血の気が引いていた。その琥珀色の瞳が、恐怖に似た何かで見開かれる。

ロビーの端までダレルを蹴り飛ばした時、セーブルが見せたショックな表情。すぐに彼のもとへ駆け寄り、介抱しようとしたあの姿。まるで俺の方が危険人物であるかのように。俺こそが、あいつから守...

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