第56話お世話させて

セーブル視点

鍵がカチャリと小さな音を立てて回った。ドアが開くと、私の新しい居場所が姿を現した。質素だが、清潔だ。中古の家具が置かれた小さなリビング。アーチ状の入り口の向こうにはキッチンが見える。私の全財産は、この四つの部屋に収まってしまった。

カエランは無言でアパートを見渡した。彼の存在感が、こぢんまりとした空間を埋め尽くしているように感じる。

「大したことないけど」殺風景な壁と最小限の荷物を前にして、私は急に引け目を感じて言った。

「君の場所だ」彼はソファに腰を下ろし、隣のクッションをポンポンと叩いた。「重要なのはそこだろ」

私は彼との間に少し距離を空けて座った。カエランの表情が...

ログインして続きを読む