第76章:フリークアウト

タオルで私の髪を乾かし終えると、ケイランは私をソファに座らせ、ドライヤーを手にした。

私は部屋の向こうにある鏡越しに、彼の姿を見つめた。その真剣な表情。髪の一束一束を丁寧に扱う手つき。

「私たちの初めてが、こんなふうになるなんて想像もしなかった」私は静かにそう漏らした。

鏡の中で、彼の視線が私と重なる。「じゃあ、どんなふうに想像していたんだ?」

「分からないけど……ロマンチックなディナーとか? キャンドルを灯して、とか。薬を盛られたあなたの代わりに、私が主導権を握るなんて展開じゃなくて」

「君は俺を救ってくれたんだ」彼はドライヤーを置くと、私の両肩に手を乗せた。「どんな形であれ、君は...

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