第79章:あなたをむさぼり食う

彼女はきっぱりと首を横に振った。「まさか! カエランはそんな……そんな普通の人じゃないわ。彼は狼王なのよ! ものすごく威圧感があって、怖いくらいなんだから」

彼女が俺をどう見ているかを知り、小さな満足感が湧き上がった。だが同時に、見知らぬ男だと思っている相手に対するその無防備な振る舞いに、苛立ちも覚えた。この相反する感情のせいで、頭がおかしくなりそうだった。

赤信号で止まると、彼女の手が俺の腕に伸び、感心したようにぎゅっと掴んだ。「うわぁ、すごい筋肉! あなた、王室の護衛か何かなの?」

俺が答える間もなく、彼女の手は太ももへと滑り落ちた。俺は鋭く息を吸い込んだ。「触るな――」

「どうし...

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