第8章:私の婚約指輪

セーブル視点

三時間ほど眠ったところで、スマホのアラームに現実へと引き戻された。

急いでシャワーを浴び、ホテルのロビーでコーヒーを掴んで病院へと車を走らせる。回診、患者のカルテ、モニターの規則的な電子音――そんな馴染み深いルーティンが、私の心を落ち着かせてくれた。

昼休み、スマホが振動した。画面に表示されたカエランの名前に、思わず手が止まる。

『おはよう、サビ。よく眠れたか? 今日は何か食べた?』

メッセージを見て瞬きした。私の基本的な生活のニーズについて、誰かが最後に尋ねてくれたのはいつだっただろうか。

『赤ん坊みたいにぐっすり。今は自販機のサンドイッチとロマンチックなランチ中』...

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