第11章 契約を破り捨てる

冴島羽美の電話越しの金切り声に、執事の福生はびくりと肩を跳ねさせた。

反射的にブレーキを踏み込み、車は道路の真ん中で急停止する。

きぃぃっと耳障りな制動音が、そのままスマホの向こうへも漏れた。

「どうしたの? 福生さん。私の話、そんなに衝撃だった?」

受話口から流れてきたのは、冷えきった声だった。

福生は慌てて頭を下げるようにして、スマホへ詫びる。

「奥様、失礼いたしました。いま小さなお子さまが突然、車の前へ飛び出してきまして……それで急ブレーキを」

だが助手席に置いた離婚協議書が視界に入り、福生は一瞬だけ言葉を迷わせる。

「奥様……荻原和夏さまが不貞を働いたのは事実です...

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